25.新人賞☆結果発表

翌朝、出社してすぐに、あたしは大前さんのデスクに出向き、頭を下げた。
「昨夜はすみませんでした。本郷部長、あれから大丈夫でしたか?」
「ああ、大丈夫、大丈夫。かりんちゃんが心配することないよ。
いつものことなんでね。それより、悪かったね、嫌な思いさせちゃって」
大前さんはおおらかに笑ってあたしの心配を取り除き、そのうえ、あたしを気遣ってくれた。
本当にいい人だ。
「それよりさ」
急に声をひそめた大前さんに手招きされ、顔を寄せると。
「昨夜、あれから水野とうまくいったか?」
あ、そうだった。
本郷部長のことで頭がいっぱいだったけど、その前に大前さんには、水野さんとのこと、はっぱ掛けられてたんだったっけ。
「いえ、まだ……」
あたしがそう答えると、大前さんはがっかりした顔でため息をつく。
「なんだよ、せっかくお膳立てしてやったのに水野のやつ、しょうがねえな。
あいつ、今朝、客先直行でさ、まだ顔見てないんだわ。
よし、戻ってきたらとっちめてやる」
えええええーっ!
あたしは慌てて大前さんを止めた。
「あ、あの、あたし、決めたんです。もう少ししたら、ちゃんと告白します。
だから、水野さんにはまだ何も言わないでください」
「え、そうなの?」
「はい、必ず! 約束します」
「そっか。かりんちゃんがそう決めてくれたんなら、もうおせっかいはやめとくかな」
大前さんはそう言って優しく微笑んでくれた。
あたしはそんな大前さんに一礼して、自分のデスクに戻った。

よし、大前さんにも約束したし、新人賞取れたら、本当に告白しよう!

そうして4月は過ぎていき、5月の連休も終わった、ある日。
あたしは体調をくずし、有給休暇をとって会社を休んでいた。

ベッドで眠っていたあたしは、電話の音に起こされた。
「……はい」
寝起きのぼんやりした頭で、とりあえず返事をする。
「遊論社『みゅーず』編集部の斉藤と申しますが、桜井かりんさんでいらっしゃいますか?」
ゆうろんしゃ……? ……って、遊論社!?
一気に目が覚めた。
ベッドの上に起き上がって正座し、受話器を握りなおす。
「は、はい! 桜井かりんです!」
「おめでとうございます。桜井さんの作品が、最優秀新人賞に選ばれました」

え?
うそ!?
ほんとに?
最優秀新人賞!?
夢じゃないよね?
あたしは、キョロキョロと部屋を見回した。
うん、間違いない。
いつものあたしの部屋だ。
ベッドから出て、鏡を見てみる。
いつもどおりのあたしだ。
うん、やっぱり、夢じゃない!

電話の向こうでは、斉藤さんという編集者が、てきぱきと今後の事務手続きについて話している。
「……ということなんですが。あのぅ、桜井さん、聞こえてますか?」
「あ、はい! 聞こえてます!!」
「あ、よかったです。で、ですね……」
やばい、ちゃんと聞いておかなくちゃ!
あたしは慌ててメモを引き寄せ、斉藤さんの声に耳を澄ませて、必要なことを書きつけていった。

「……はい、では、失礼いたします」
斉藤さんが電話を切るのを確認してから、あたしはそっと受話器を置いた。
手には賞金や受賞パーティーのこと、デビュー作の手直しの段取りなどが、細かく書かれたメモが残った。
しばらく、じっとその文字を見つめる。
そうしているうちに、じわじわと実感がわいてきた。

……やった。
あたし、やったんだ!
新人賞、取れたぁ!!

目の前にあった枕にダイブする。
嬉しいよぉ。
実感がこみ上げてくると、涙がにじんできた。
頑張った甲斐があった。
本当に嬉しい!
今のこの気持ち、誰かに伝えたい!!

涙をぬぐい、震える手で携帯のボタンを操作する。
まずは……。
そうだ! 田所さんを紹介してくれた舜にお礼メールしなくちゃね。

『舜、やったよ\(^o^)/
入賞した!
みゅーず、最優秀新人賞!
いろいろありがとう。
舜には、ほんとに感謝してる。
ほんとにほんとにありがとう!!』

そして、もちろん、水野さんへ。
なんて書こうかな……。
舜にはスラスラ出てきた言葉が、水野さんへだと、つい、いろいろ考えちゃう。
迷いながらも、あたしは文を打ち始めた。

『お疲れ様です。
今日は有休をとって自宅で休んでいたんですが、今さっき、出版社から電話をもらいました。
最優秀新人賞を取れました!
応援してくださってありがとうございました。
水野さんが背中を押してくれたおかげです。
本当にありがとうございましたm(__)m』

うん、こんなもんかな?
よし、送信っと。

と、ものの1分も経たないうちに、メール着信音が鳴った。
舜からの「おめでとう」の返信だ。
そしてその直後、今度は電話の着メロが流れた。
もしかして……。
やっぱり! 水野さんだ!
あたしは緊張しながら通話ボタンを押した。

「もしもし?」
「かりんちゃん? おめでとう、やったな! 祝勝会やらなきゃな!
有休とったってメールに書いてあったけど、体調悪いの?」
電話の向こうから、ザワザワと街の音が聞こえる。
水野さん、外回りの途中なのかも。
「はい、寝込んでたんですが、でも、入賞の連絡もらったら、すっかり良くなっちゃいました!」
事実、薬を飲んで半日寝ていたせいもあってか、すっかり気分はよくなっていた。
それに……。
水野さん、お祝いのこと、覚えててくれたんだ!
それが嬉しくて、体調不良なんて、どっかに飛んで行っちゃったよ。
体調も気分も最高!

「そう、それならよかった。でも、発表は6月って言ってなかったっけ?」
「はい、雑誌での発表は6月1日なんです。
ただ受賞者にはいろんな手続きの関係で、早めに連絡くださったそうです」
「ああ、なるほどね。本当によかったね。
あー、ごめん、今移動中であまり話している時間がないんだけど……。
お祝い、早い方がいいよね? 体調がいいなら、僕は今夜でもいいけど、どうする?」
「はい、今夜で大丈夫です!」

やっぱり、水野さん移動中だったんだ。
忙しそうだったので、手短かに待ち合わせの時間と場所を決め、すぐに電話を切った。

新人賞受賞、そして、水野さんとお祝いデート!
どっちもあたしには、最高に嬉しい。
時計を見ると、時刻は午後1時を回ったばかり。
約束は夜なのに、あたしはもう何を着て行こうか、ソワソワと落ち着きなくクローゼットを開け、考え始めた。


夜7時、5分前。
ヘアもメイクもばっちり決めて、待ち合わせ場所に向かう。
なんてったって、今夜は水野さんに告白もするつもりだったから、気合を入れてきた。
仕事帰りにスーツで来る水野さんに合わせて、あまり華美になり過ぎないように、でも可愛く見えるように、服もアクセも選び抜いた。
しかし、待ち合わせ場所の目印のオブジェが遠くに見えてきたとき、あたしは愕然とした。

え、どういうこと?
水野さんの隣に美沙子さんが立っている。

なんで?
二人きりじゃないの?
しかも、美沙子さんって……。

仲良く談笑する二人の姿を遠くに見ながら、あたしは急激に気分が重くなった。
どうしよう。行きたくないな……。
あたしが立ち尽くしていると。
「よ、かりん! おめでとっ」
後ろからポンッと肩をたたかれ、振り向くと。
「舜!?」

隣に立った舜を見上げる。
満面笑顔の舜が、エスコートするようにあたしの背を押して歩き出す。
「水野さんに、かりんのお祝いするから来ないかって誘われてさ。
もう、あっちにいるじゃん! 水野さん、お疲れ様です!」
あたしはしぶしぶ足を踏み出し、水野さん、美沙子さんと合流した。
「あら、一緒に来たの? しばらくぶりー」
美沙子さんがにこやかに声を掛けてくる。
その笑顔に曇りはない。

あたしは、気持ちを切り替えることにした。
皆、あたしのために集まってくれたんだ。
ありがたいことだよね。
がっかりなんてしてないで、喜ばなくちゃ。
告白はまた次の機会にすることにしよう。

あたしは美沙子さんに会釈を返し、水野さんと目を合わせた。
「こんばんは。皆に声かけてくれたんですね。ありがとうございます」
あたしが笑顔でそう言うと、水野さんは戸惑ったような表情で、一瞬、美沙子さんの方を窺った。
ん?
美沙子さんがどうかした?
舜と再会を喜び合ってるけど……。

「ああ、いや、新人賞おめでとう」
水野さんは笑顔でそう言ってくれたけど。
その笑顔、作ってない?
なんだろ?
ちょっと気になる……。
でも、なんとなく今は何も言わない方がいいような気がする。
これは、女の直感。
あたしは自分が感じた違和感には触れずに、水野さんに「ありがとうございます」ともう一度頭を下げた。

それからあたしたちは、水野さんが予約してくれたレストランへ4人で向かった。


「「「「乾杯!」」」」
シャンパンで乾杯を済ませると、舜がつぶやいた。
「あーあ、先を越されたなあ」
「え、なにが?」
あたしが聞くと、舜はグラスを置いて話し出した。
「前に話しただろ?起業の話。
美沙子さんにいろいろアドバイスしてもらって、資金繰りも目処がついてきたから、かりんがマンガ家デビューするより先に、俺が社長になってびっくりさせてやろうと思ってたんだけどさ」
「えーーーっ、そうなの? あたし、舜の起業って、もっと先の話だと思ってた」
あたしは、舜の独立は、まだ何年か先の話だと思い込んでいたので、心底驚いた。
「ま、どうせ負けたんなら、もう少しじっくり腰落ち着けて準備して、1月頃にするわ」
「ええっ!? それだってあと半年じゃない。それで、一体なにやるの?」
「ん? それは、内緒」
舜はもったいぶって教えてくれない。
でも、どうやら美沙子さんは相談を受けて知っているようで、あたし達のやりとりをクスクスと笑って見ていた。
んー、教えてくれないならしょうがない。あたしは質問を変えた。
「起業したら、舜は会社辞めるの?」
「当然!」
そっか。そうだよね……。そうなったら、ちょっと寂しいなぁ。
「そういうかりんちゃんは、マンガ家デビューしたら、会社はどうするんだい?」
水野さんに聞かれ、あたしは我に返った。
「え、あたしですか? あたしは……。
デビューって言っても、すぐにたくさん依頼が来るとは思えないですし、どれくらい原稿料が入るかもわからないですし、当面は今までどおりだと思います」
「二足のわらじってワケか」
「そうですね」
「でも、いずれはマンガ家一本でやっていくつもりなんでしょう?」
美沙子さんも会話に入ってきた。
「そうなったらいいな、とは思いますけど……」

あたしはまだ、マンガ家のスタートラインに立ったばかり。
美沙子さんの言うようにマンガ家だけで生活できるようになれればそれが一番だけど、まだ先は見えない。

「頑張ってね」
美沙子さんに微笑んで激励され、あたしは不安を追いやった。
先なんか見えなくてもいい。
とにかくがむしゃらに頑張るだけだ。
「はい、ありがとうございます!」
あたしは笑顔で答えた。

「実は、私も今日は報告があるの」
美沙子さんが、あたしと舜の方を向いて姿勢を正す。
「私、6月20日の日曜日に、結婚することになりました!」

あ、そういえば。
あたしは、イブに水野さんから美沙子さんが婚約したと聞いたことを思い出した。
いよいよ結婚するんだ。

「えー、マジですか? おめでとうございます!」
舜が驚いた表情で美沙子さんを祝福する。
対照的に、水野さんは落ち着いた顔でグラスを傾けていた。
きっと、もう知ってたんだね。

「おめでとうございます」
あたしも美沙子さんにお祝いを述べた。
「ありがとう。相手は取引先の人でね、披露宴は会社関係者ばかりなんだけど、2次会には、是非あなた方もいらして」
そう言って、美沙子さんはバッグから封筒を出し、あたしと舜に渡してくれた。
中には2次会の招待状が入っている。
「もちろんお祝いに行きますよ、なあ、かりん?」
舜にそう言われ、あたしは見ていた招待状から目を上げた。
「あー、ごめんなさい。あたし、この日はちょっと……」
「ダメなのか?」
聞いてきた舜と、美沙子さんの顔を等分に見て言った。
「実は、新人賞の受賞パーティーが同じ日なんです」

今日、編集部からの電話でそう聞いたばかりだった。

「あら、それじゃあ、仕方ないわね……」
「すみません」
「ううん、いいのよ。かりんちゃんの大切なパーティーですもの。気にしないで」

「水野さんは、行くんですよね? 美沙子さんの2次会」
舜が水野さんに話を振ると、水野さんは食事の手を止めて口を開いた。
「僕は、大学時代の仲間と一緒に披露宴から招待されてるんだ。
2次会にももちろん行くつもりだよ」
「あ、そっか、美沙子さんと水野さんは、大学の先輩後輩でしたもんね」
舜は納得顔でグラスを傾けた。
美沙子さんもにっこり微笑んでいる。

イブの婚約パーティーには出なかった水野さん。
でも、披露宴には出るんだ。
ってことは、水野さん、美沙子さんと和解したんだね。
あれから、水野さんと美沙子さんの関係がどうなったのかすごく気になったけど、少なくとも披露宴に出るような関係には戻ったんだ……。

なんだろ? なんとなく胸の奥がモヤモヤする。

すると、水野さんがあたしに話しかけてきた。
「受賞パーティーっていうのは、どこでどんなことをやるの?」
あたしは編集部から聞いた、都内のホテルの名前を挙げた。
「あたしも初めてのことなんで詳しいことはわからないんですけど、ホテルの会場で賞状を頂いて、選考委員の先生方の講評を聞いたり、あとは歓談したりって感じみたいです。
あたしの尊敬するマンガ家先生もいらっしゃるみたいなんで、サインもらってこなきゃって楽しみにしてるんです」
「おいおい、サインって。かりんだって、マンガ家になるんだろ?
まだまだ素人気分なんだな」
舜に突っ込まれ、あたしはイーッとにらんだ。
フーンだ、どうせまだまだ素人ですよ!
すると、それを見ていた美沙子さんに笑われてしまった。
「でも、かりんちゃんの晴れ姿、見に行きたかったわ」
美沙子さんがそう言うと、舜が真面目な表情に戻り、首を振った。
「授賞式は、関係者以外は入れないと思いますよ」
「あら、そうなの?」
「ええ、招待状を持っている人しか入れないことになってるはずです」
舜がそう説明すると、水野さんが不思議そうな表情で口を挟んだ。
「ずいぶん詳しいんだね」

水野さんは何気なく言ったようだったけど、舜はピクリと眉を動かし、しまった、という表情をしている。
すると、美沙子さんがクスリと笑って舜に囁いた。
「白状しちゃえば? 水野くんは口堅いわよ」
ああ、美沙子さんは舜の素性、知ってるんだ。
あたしもニヤッと笑って舜がどうするか見ていた。
いつもいじめられることの方が多いから、窮地に立った舜を見るのはちょっと面白い。
事情を知らない水野さんだけが、きょとんとしている。
「まあ、別にいいけど……」
舜が諦めたようにそうつぶやくと、美沙子さんが代わりに水野さんに説明した。
「舜君のお父様は遊論社の社長さんなんですって。
それで、授賞式のことにも詳しいのよ」
それを聞いた水野さんは、目を丸くしている。
「ええっ!? 遊論社の社長!?」
「ええ、そうなんです」
舜は少しばつが悪そうに水野さんに頷くと、美沙子さんの方を向いた。
「だから、どうしてもっていうんなら招待状も手配できると思いますけど……。
でも、どっちみち、美沙子さんその日は無理でしょ?」
「そうね」
美沙子さんは残念そうに頷いた。
「だから、今日、お祝いってことで、な?」
そう言って、舜はあたしの方にグラスを掲げた。
あたしは、ありがと、とグラスを合わせた。
「じゃあ是非また後日、パーティーの報告を聞かせてね」
そう言う美沙子さんにあたしは微笑んで頷いた。
「はい。あたしも美沙子さんの結婚式や新婚旅行の話、あとで聞きたいです。
新婚旅行はどちらに行かれるんですか?」

それからは美沙子さんの新婚旅行や新居の話などを聞き、楽しく食事の時間は過ぎていった。


レストランを出て次の店に向かって歩いていると、水野さんがスッとあたしの隣に来て小声で話しかけてきた。
「かりんちゃん、今日、美沙子さんや舜君も一緒でごめんな?」
「えっ、そんな。皆さんに祝っていただいて嬉しいですよ」
作り笑顔でそう答えたけど。
まさか、あたしが最初、美沙子さんと一緒に立っている水野さんを見てがっかりしたこと、見透かされてた?
ドキドキしながら、水野さんを見ると。
「あのさ、前に約束したときのこと、覚えてる?
新人賞取れたらお祝いするって約束したときのこと」
「ええ、もちろんです」
大前さんや本郷部長と飲みに行った帰りのタクシーでのことを思い出した。
「タクシーであたしがおねだりしたんですから」
「うん、あの時、お祝いは僕一人でやるつもりだったんだけど、実は今日、もともと美沙子さんに披露宴の招待状を渡したいからって呼び出されてたんだ。
例のこと以来、ずっと美沙子さんのこと避けてたんだけど、今日はどうしても断れなくて、でも二人きりで会うのはちょっと気が引けててさ。
そしたらかりんちゃんからメールが入ったから、ついそのお祝いを理由にして舜君も付き合わせてみんなで、ってことにしちゃったんだ。
ごめんな」
「あ、そうだったんですか……」

そっか。
だから、今夜最初に会った時、水野さん、美沙子さんの様子を窺ってたんだ。

水野さんはゴメンと謝ってくれたけど、あたしは別に嫌な気はしていなかった。
むしろ、その逆。
水野さん、美沙子さんと二人きりで会いたくなかったんだ……。
そう思ったら、食事中ずっと感じていた胸の奥のモヤモヤが消えてすっきりした。

あれ?
さっきのって、もしかして……、嫉妬、だったのかな?
うわぁ、あたし……。
自分の中に渦巻いていた嫉妬に自己嫌悪。

美沙子さんは今日だって心からあたしにお祝いを言ってくれて、優しくていい人なのに。
あたし、醜いな……。

「……だから、今度また日を改めて僕だけでご馳走したいんだけど、どうかな?」
水野さんの声に我に返る。
「えっ、いえ、そんな。今日もおごってもらいましたし、十分です」
物思いにふけっていたあたしは、よく考えもせずに水野さんの誘いを断ってしまった。
あっ、しまった!
断ってしまってから後悔した。
二人きりで飲みに行けば告白するチャンスができたのに。

水野さん、もう1回誘ってくれないかな。
淡い期待を抱いたけれど、水野さんはそれ以上は誘ってくれず、話しかけてきた舜と美沙子さんとの会話に入ってしまった。

あーあ、失敗……。


2軒目のバーでも4人でお喋りしながらお酒を飲み、それはそれで楽しかったんだけど。
帰り、水野さんは美沙子さんを送ることになって、あたしは水野さんと二人きりになるチャンスもなく、結局水野さんと次に会う約束はできずにさよならして……。
あたしはおとなしく、舜に送ってもらって家に帰った。