3.いきなり☆キス
「ちょっ、舜! いきなり何すん……」
あたしの抗議を最後まで聞かずに、舜はあたしの腕をつかんで歩き始めた。
「ど、どこ行くのよ!」
でも、あたしの抵抗なんて、舜には何ほどのこともない。
ずるずると引っぱっていかれる。
会場を出るのかと思ったら、近くにある『関係者以外立入禁止』のドアを開けて中に入っていく。
「ちょっと、舜!こんなとこ入っていいの?」
あたし、関係者じゃないし。
「俺、昔ここでバイトしてたんだ」
「えっ、そうなんだ」
って納得してる場合じゃない!
「昔はそうだとしても、今は違うじゃ……、んんっ!」
ドアが閉まったとたん、またキスされた。
しかも、今度はかなり深いキス。
あたしは舜にがっちり抱きしめられて身動きできず、舜のキスを受けるしかなかった。
目だけキョロキョロ動かして辺りを見まわすと、どうやら備品倉庫みたい。
あたしは舜にドアに押し付けられるように立っていたので、誰かが入って来ようとしてもあたしの重みでドアは開かない。
逃げようがなかった。
……と、唇が離れた。
「ちょっと舜!どういうつもり!?」
あたしは舜をキッと睨みつけた。
「かりん、可愛すぎ」
「はあ?」
「おまえ、うまいもん飲み食いしてる時、すげえ可愛い顔するんだよ」
「えっ……」
何、赤面させるようなこと言ってんのよ!
あたしが動揺していると、舜はまたあたしにキスし、胸に手を触れてきた。
「ちょっと舜、ダメ!」
押し返そうとすると、今度は首すじにキスしてきて囁く。
「かりん、俺もう我慢できない。おまえ、無防備過ぎなんだよ……」
耳たぶをあまがみされて、おもわず声が漏れる。
しかも、自分でも恥ずかしくなるような甘い声が……
舜があたしを見つめてきた。
「そんな声聞かされたら、もう俺とまんねえ」
ドキン……
舜の切ない声音に胸が高鳴る。
舜はまた唇にキスしてくる。
舌を絡めとられ、頭がぼぅっとする。
舜の舌が彼の想いを伝えてきた。
熱い……
舜……あたし……
舜が好き……
あたしは目を閉じ、舜のキスに応えた。
すると、舜はあたしのドレスのすそに手をかけてきた。
えっ!?
あたしは我に返った。
「や、ダメ! 舜、こんなところで……」
「じゃあ、ここじゃなきゃ、いい?」
舜はあたしの目を覗き込みながら低い声で囁いてくる。
舜、すごく色っぽい……
そんな舜の妖しい顔を見て、あたしは体の奥がうずくのを感じた。
あたしも舜が欲しい……
あたしはそっと頷いた。
「じゃ、これから俺ん家行こう」
舜に肩を抱かれ、そっと備品倉庫を出る。
幸い誰にも見咎められなかった。
会場には会社の人がたくさんいる。
こんなところを見られたら、あっという間に噂になっちゃう。
見つからずにすんでよかった。
ほっとしたら、キスして落ちてしまっただろうルージュが気になった。
そのまま出口ヘ向おうとする舜にあたしは声をかけた。
「ちょっとお化粧直してきたいから、少しだけ待っててくれる?」
「リョーカイ。じゃ、さっきのバーで待ってるよ」
微笑んでカウンターへ戻っていく舜を見送り、あたしはトイレへ向かった。