5.接客トラブル発生 ― 11

「あぁっ!」
ズンと一気に入れられ、宮部の腕にしがみ付いた。
すぐに小刻みな律動が始まる。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
熱い塊を身体の中心に突き立てられ、もたらされる快楽に翻弄される。
しかし、興奮が頂点を極めようとした一歩手前で、宮部は一度動きを止めた。
大きく息を吐き、呼吸を整えていると、今度は両足を肩に担がれる。
「はあぁっ!」
より深く結合し、電流が身体を走った。
その状態で腰を振られ、あっという間に絶頂に昇りつめてしまった。
しかしそれでも、宮部は動きを止めない。
「いやぁ! 宮部、もうダメェ……」
叫んでも許してもらえず、されるがままになっていると、今度はうつぶせに体位を変えられた。
ぐったりとシーツに顔をうずめると、腰を引き上げられ、後ろから入れられる。
「あぁっ!」
パンパンと打ち付けてくるのと同時に、胸や下腹の敏感なところを指で責め立てられ、我を忘れて恍惚となる。
「あぁぁ、いい……」
その言葉をきっかけに、宮部の動きがさらに激しくなった。
「はあぁぁぁっ!」
もう何度目かわからないエクスタシーに泣き叫ぶと、再び正常位に戻された。

つながったまま、宮部は目尻についた涙のあとに口づけてくる。
「どう? 気持ちよかった?」
甘く低い声で囁かれ、麻痺していた身体に、また小さな火がともる。
「もう……」
快感というには、激しすぎる応酬だ。
でも、口内を蹂躙するような深いキスを受けると、しびれきっていたはずの身体がまた熱くなっていく。
髪をなでて、まぶたや頬にキスを降らせてくる宮部が、いとおしくてしかたない。
そんな気持ちに連動して、まだつながっているそこが、ヒクヒクと痙攣してしまう。
すぐに気付いた宮部は、ひときわ妖しく微笑んで、耳たぶを舐めてきた。
「あんっ!」
耳の中まで舐められて、反射的に腰が動く。
「まだ足りない?」
クスクス笑う宮部は、悪魔だ。
「もうっ、そうじゃなくて……」
最後まで反論させてはもらえず、宮部はまた腰を振りはじめる。
「あっ、あっ、あっ」
「今度は俺も一緒にイカせて?」
色っぽく囁かれ、目の前に宮部の頭をかき抱いて、自分から口づけた。
すぐに舌を絡ませて応じてくれた宮部の背中に手を回し、身体全体で宮部の動きにリズムを合わせる。
「あぁっ、宮部ぇ、いいっ! あぁぁぁ……」
「姫っ、くっ……」
私が達した直後、宮部も昇りつめ、私の上にどさりと身体を沈めた。

後始末を済ませると、宮部は、ぐったりと目を閉じている私の隣に横たわり、頬をつついてきた。
「姫、起きてる?」
「ん……」
「今日は、気失わなかったね。しらふだったせいかな?」
そういえば、食事のときに渡されたのは、ノンアルコールだった。
でも、ある意味、今回の方が痛手は大きい。
余韻に浸っている今も、まだ下腹がジンジンしている。
こんなに連続してイかされたのは、初めてだ。
それに。
また、ヤッてしまった……。
宮部に会ったら、まず、私たちの関係について問いただそうと思っていたのに。
それに、美里さんと宮部の関係も。
全部ちゃんとしてから、先に進みたかったのに、また流されちゃった……。

「姫? どうした? 疲れちゃった?」
半分体を起こして、顔をのぞきこんできた宮部と視線がぶつかる。
手を伸ばしてきた宮部は、私の髪を耳にかけて、キスしてきた。
優しく触れるだけのキスに、胸の奥が温かくなる。
唇を離した宮部は、そのまま至近距離で私を見つめてくる。
いとおしそうに髪を撫でられ、たとえようのない幸福感に包まれた。
「宮部……」
「ん?」
「……好き」
「うん、俺も」
少し照れたように微笑んで、またキスをくれる。

……もう、いいや。
今さら『私たち、つきあってるの?』なんて訊いても、しかたない気がしてきた。
今夜だって宮部は、「好き」も「愛してる」も、はっきりとは言ってくれてない。
さっきだって、「俺も」だけだったし。
でも、もういい。
だって、私はもう、完全に宮部に堕ちてる。
宮部が好きで、こうしている時間が幸せで……。
だったら、もう、いいよね?
たとえ宮部が、私のことをセフレとしか思っていなくても、美里さんと二股かけられていたとしても、それでも構わない。
だってもう、宮部を好きだっていうこの気持ちは、変えられそうにないもの……。

「宮部……」
私は、宮部の首に抱きついて、深いキスをねだった。
「んんっ……?」
舌を絡ませながら、宮部は目を丸くしている。
珍しく、私から積極的に行ったから、ビックリさせちゃったかな?
でも、もう決めたから。
半身を起こし、宮部を押し倒して、キスをむさぼる。
「姫?」
驚いて見上げてくる宮部に微笑みかけ、目を閉じて、宮部の肩に頭を載せた。
宮部の身体に腕を回して抱きつくと、密着した素肌から、たとえようのない幸せな感覚が流れ込んでくる。
「宮部、大好き」
「ん……」
宮部はまたゆっくりと、私の髪を撫でてくれる。
穏やかな夜が、静かに更けていった。