4.あいまいな関係 ― 5

せまい1Kの部屋に上がる間も、私と宮部はキスを繰り返し、もつれるようにベッドに倒れこんだ。
薄闇の中、唇に、首筋に、お互いにキスを降らせ、はぎ取るように服を脱がしあう。
上半身裸になると、宮部はすぐに胸のふくらみに口づけてきた。
「あっ、んんんっ……」

私が住んでいるのは独身女性限定のマンションで、両隣ともOL風の女性が入居している。
生活音はさほど響かないマンションだけど、大きな喘ぎ声を出せば、聞こえてしまうかもしれない。
胸の先端を軽く噛むように愛撫されるたびに、体に走る電流を、歯を食いしばって耐える。
それでも、唇と舌と歯を巧みに使う宮部の愛撫に、こらえきれない声が漏れてしまう。

「はぁ、んん……」
「姫、我慢する顔もかわいい……」
そんなことをつぶやいたかと思うと、宮部はスカートの中に手を入れてきた。
「あっ!」
もうすっかり濡れそぼった場所を指でなぞられ、体が跳ねる。
「もう、こんなになっちゃってるよ」
濡れた指先を見せつけられ、思わず顔をそむける。
「やだぁ……」
「なんで? 感じてるんでしょ?」
宮部は、またすぐにそこに指をあてがい、何度もなぞる。
「んんっ……」
腰が浮きそうになるのを、グッとこらていると。
「もっと欲しいんでしょ? どうして欲しいか言ってみて」
「そんな……」
要求はひとつだけ。わかってるくせに訊いてくるなんて。
「いじわる言わないで」
泣きそうな声で懇願すると、ニヤッと笑った宮部は、グッと指を入れてきた。
「ああんっ!」
「姫、隣に聞こえちゃうよ。まだこれからなのに」
クスクス笑う宮部は、余裕の表情。
自分ばっかり、ズルい……。
でも、私の方はまったく余裕なんかなくて、宮部の指の動きに翻弄させられっぱなし。
執拗に快感を与えられ続け、どんどん息が上がっていく。

――ハァッ、ハァッ、ハァッ……。

「ああんっ、宮部、もうダメ……」
「ダメ? まだなにもしてないよ?」
「もうっ!」
早く入れてほしい。でも、そんなこと、恥ずかしくて言えない。
すると。

――カチャ、カチャ……。
ベルトを外す音が聞こえてきた。宮部が服を脱ぐ気配に、期待が高まる。
「姫、行くよ?」
ウン、とひとつうなずくと、宮部が私に中心に押し入ってきた。
「はあぁっ!」
「あぁ、いいよ、姫……」
囁くようにそう漏らした宮部は、奥まで到達すると、動きを止めた。
せまいところを押し広げていっぱいになっている宮部の存在を、体の奥で実感する。
すると、宮部がおもむろに動き出した。
私の両足を腕で固定し、規則的に運動を繰り返す。
「あっ、あっ、あっ、あんっ、はぁっ……」
動きに合わせて、声が漏れ出るのを止められない。
身体がぶつかる音と水音と、お互いの荒い息遣いが静かな部屋に響く。

ああっ、いいっ! いいっ! いいっ!
高まる快感に、もう声も出ずに、心の中だけで叫び続け……。

「姫、行くよ?」
「はぁっ、宮部、来てぇっ……」
押し殺した声を合図に、宮部の動きが激しさを増して……。
「ああああっ!」
押し寄せた絶頂の波に一気にさらわれ、私は意識を手放した。